No.69 脳と運動器の不思議な関係(追記)

s-青花

「体が覚えている」

過去に頭で覚えたことは思い出せないのに、久しぶりに自転車に乗ったり、プールで泳いだり、楽器を弾いたりしても、以前と同じように自然と体が動くのはなぜでしょうか?

その違いは、覚えたことが、脳のどの部分に記憶されたかにあります。頭で覚えたことは、大脳にある海馬や大脳皮質に記憶されますが、記憶されやすい反面、その記憶は時間とともに消えてしまいやすいという特徴があります。

一方、体の動かし方は、小脳に記憶されますが、記憶されるまでに時間がかかる反面、その記憶は時間が経っても簡単には消えないという特徴があるのです。

このことを、よく「体が覚えている」と言い表しますが、体といっても手足などに記憶されたというわけではなく、記憶されたのは、あくまでも小脳です。小脳に記憶されるまでには、実際に何度も繰り返し体を動かすことが必要です。そうしない限りは、どれだけマニュアルを読んでも、他人の動きをじっくり観察しても、小脳に記憶されることはありません。

運動野からの指令は体の筋肉に届くと同時に小脳にも届きますが、例えば、初めて自転車に乗る練習をした場合、指令どおりに乗れずよろけて転んでしまったときの体の動かし方は、小脳の特殊なしくみによって記憶されないようになっています。そして、何度も失敗を繰り返すことでようやく習得した指令どおりの体の動かし方だけが小脳にしっかりと記憶され、それ以降は、いとも簡単に自転車を乗りこなせるようになります。よくできていますね。

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