No.76 身近な食品で運動器を強化

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近年、メタボリックシンドロームが広く知られるようになった一方で、誤った食事制限による栄養素の不足に伴う運動器への悪影響が問題視されています。特に、食事を抜くと、不足したエネルギーを体内で調達するために、骨格筋や骨に存在するタンパク質が分解され、これが習慣化すると、骨格筋量や骨量の低下は深刻な状態に陥ります。

骨格筋量や骨量が低下したまま高齢期を迎えると、運動神経などの衰えも加わって、転倒と骨折を引き起こしやすくなります。さらに、骨折治療のために寝たきりになることで筋力の衰えが進み、悪循環に陥ります。

したがって、運動器の健康維持のためには「鍛える運動」「骨格筋と骨の栄養補給」を両立することが勧められています。

骨格筋の材料といえばタンパク質ですが、タンパク質は骨の材料にもなります。タンパク質は何種類ものアミノ酸によって構成されており、そのアミノ酸には体内で合成できない必須アミノ酸と、体内で炭水化物や脂質などから合成できる非必須アミノ酸とがあります。いずれも骨格筋の材料として使われますが、特に、必須アミノ酸が不足することのないように、毎回の食事で意識して摂取する必要があります。

そこで参考にしたいのが、アミノ酸スコアと呼ばれるものです。アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対してどれくらいの割合で含まれているかを示す指標です。最高値は100で、数値が高いほど良質なタンパク質と呼ばれています。

<アミノ酸スコア100の食品例>

牛肉(サーロイン)・鶏肉(モモ、ムネ、ひき肉)・豚肉(ロース脂身なし)・羊肉(ロース)・レバー(牛、鶏、豚)・卵・牛乳・ヨーグルト(無糖)・アジ・イワシ・サケ・カツオ・マグロ・サンマ・ベーコン・プロセスチーズ・大豆・納豆・豆腐など。

アミノ酸スコアが100である魚類には、小腸におけるカルシウム吸収を促進するビタミンDが含まれています。また、大豆や大豆製品には、カルシウムはもちろん、骨の材料となるほかに筋収縮を調整するマグネシウムが含まれています。以上のようなことを参考にしながら、これからの毎日の食生活に役立ててみてはいかがでしょうか。

なお、ナトリウムやアルコールは、利尿作用によってカルシウムの排泄を促進し、タバコのニコチンは、消化吸収率を低下させることがわかっていますので、生活習慣病予防のためにも、骨格筋や骨のためにも注意しましょう。

以上の点を留意した上で、運動した場合は運動直後から1時間後までの間に食事をとり始め、夕食の場合は就寝2時間前までに食べ終えるようにすれば、運動後または就寝30分~3時間後の成長ホルモン分泌促進時に血液中のアミノ酸濃度を十分に維持することができるため、骨格筋と骨をつくるために効率の良い状態をつくりだすことができるといわれています。

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