No.39 冬の食養生Ⅰ(東洋医学)

東洋医学では食べ物の味をその性質によって、「酸味(さんみ)」「苦味(くみ)」「甘味(かんみ)」「辛味(しんみ)」「鹹味(かんみ)」の5種類に分類します。これらは「五味」と呼ばれ、酸は「すっぱさ」、苦は「苦さ」、甘は「あまさ」、辛は「からさ」、鹹は「塩辛さ」です。この5つの味は、肝・心・脾・肺・腎に対応していて、それぞれの対応する臓腑を補い調整する作用があります。

また、食物には、食べたあとに体をあたためるものや冷やすものがあります。その働きを大きく分けて、体をあたためるものを「熱(ねつ)」、ややあたためるものを「温(おん)」、どちらでもないものを「平(へい)」、やや冷やすものを「涼(りょう)」、冷やすものを「寒(かん)」と呼んでいます。このうち、冬に取り入れたい食物は、鹹味(塩辛い味)の食物、そして、熱や温の食物です。これらの食物は、体をあたためて腎と膀胱を補います。

■腎と膀胱を補う「鹹味(かんみ)」の食物を取りましょう

鹹味(かんみ)と苦味の関係

鹹味(かんみ)の食物は、食塩、味噌、醤油をはじめ、ワカメ、ヒジキ、ノリ、アサリ、シジミ、イワシ、メザシ、ジャコなどが代表的です。

これらの食物は、色が濃く、黒っぽいものが多いという特徴がありますが、「陰陽五行理論」においても、青・赤・黄・白・黒の五色のうち、黒は腎を補うと記されています。日本の東北地方などは、味噌や醤油の塩分濃度が高く、漬物、佃煮、魚の塩漬けなどの郷土料理に食塩を多く用いていますが、この背景には、鹹味(かんみ)の食物の働きに気づき、それをうまく活用することで、厳しい冬の寒さに耐えてきた歴史にもあらわれています。

ただし、鹹味(かんみ)の食物を取りすぎると、「腎」が抑制される関係に位置する「心」に負担がかかり、血のめぐりに影響が出てきます。そういうわけで、腎と相克(抑制)の関係にある心の働きを補うためには、鹹味(かんみ)の食物とともに、苦味の食物を一緒に食べるようにすると効果的です。

苦味の食物のうち、さらに「温」の働きを持つものは、カブ、アスパラガス、ヨモギが代表的です。

なお、鹹味(かんみ)の食物である食塩には、天然のものであれば苦味の「にがり」が含まれています。ということは、天然の食塩は、腎と膀胱の働きを補いながら、相克の関係にある心の負担をやわらげることができるわけです。

鹹味(かんみ)の食物には、体をあたため、腎と膀胱を補うほかに、水(津液)の代謝を調節したり、硬いものを軟らかくして体にできた硬いしこりを解消したりする働きがあります。こんな働きを利用した民間療法には、肩がこったら食塩を入浴時にすり込むという方法も聞きます。

寒さの厳しい北国に住む人たちは、寒邪によって血管や毛穴が収縮するため、水(津液)を発散しにくく、体に余分な水(津液)が滞りがちです。水(津液)を調節する腎の負担を減らすためにも、鹹味(かんみ)の食物を必然的に多く取り入れてきたと考えられています。

ただ、現代においては、ナトリウムを取りすぎることへの問題点が指摘されています。ナトリウムの過剰摂取によって血液中のナトリウム濃度が上昇すると、それを一定に保つために水分が取り込まれ、血液量が増えます。また血管壁に浮腫が起こって血管内部が狭くなります。その結果、血液が流れにくくなって、心臓に負担がかかるわけです。体質によっては、血圧を上げる危険性もあります。したがって、冬の食養生においては、鹹味(かんみ)の食物を積極的に取るのではなく、ナトリウム制限の必要性がなければ適度に摂り、減らしすぎないようにすることが必要ですね。

2 Responses to No.39 冬の食養生Ⅰ(東洋医学)

  1. ブログ更新ありがとうございます!
    いつも読んで勉強させてもらっています(^^)♪

    腎が弱った時の鹹味は普段取り入れてましたけど、
    相克関係にある心の苦みは考えてなかったです(^_^;
    しかも今回は解説するための図が載っていて分かりやすい!

    大塚さんが中医学の勉強をしたいそうなので、
    心庵のブログを読むように薦めさせてもらいますね(^ω^)

    今回も良い勉強をさせてもらいました♪(^∀^)\

    • 島崎さん、いつも読んでくださってありがとうございます。
      なるべく、普段の生活のお役にたてるような内容を発信していけるようにしていきたいと思っています。(佐藤)