No.87 薬で合併症を予防「降圧薬治療」

s-DSC02103

数ヶ月に渡って生活習慣の修正をしても「血圧の値がなかなか正常範囲まで下がらない」といった場合には、降圧薬による薬物療法が開始されます。

服用を開始して数ヶ月間は、2~3週間に1回ほど受診し、血圧の状態や副作用がないかをみていきます。服用している間に症状が変化したときには、医師にすぐに報告が必要です。

最近の降圧薬は、副作用も少なく、臓器保護作用もある薬が多く開発され、長期間に渡って服用することが可能になってきています。正しい服用を続ける限りは、現在の降圧薬治療は、きわめて安全ですが、薬の影響を受けやすい腎臓や肝臓の検査を定期的(3~6ヶ月に1回)に受けることも長期間に渡る降圧薬治療を続ける上では大切です。

降圧薬治療の目的は、血圧を下げることで血管の損傷を少なくし、合併症の予防や進行を抑えることです

よって、「血圧の値が下がれば、高血圧は治った」ということにはなりませんので、自己判断で服用を中止するのは問題です。

また、降圧薬治療を開始しても、血圧のコントロールを薬だけに頼らず、継続して生活習慣の修正を行っていく必要があります。

薬の効果の確認と自分の血圧の状態を把握するためには、家庭でも毎日血圧を測定・記録し、それを医師にみせて適切な治療を行っていくことで血圧を良好な状態にコントロールしていきます。

降圧薬治療を行う際には、高血圧の病態、心血管病のリスク、臓器障害、年齢、性別、治療前の血圧値などを考慮して、降圧目標が決められ、薬の種類や量なども変わってきます。

合併症の予防や進行を防ぐためには、厳しい血圧のコントロールが求められるため、糖尿病患者、腎臓病患者、心筋梗塞後患者は、より厳格な血圧コントロールが必要となります。

ただし、高齢者や脳血管障害のある方への過度な降圧はかえって危険(循環障害をより進行させる)をともなうため、やや高めの降圧目標とし、医師の指導を受けながら緩やかに血圧を下げていくことが理想です。しかし、この高めの目標設定については、もっと低めの設定が妥当という意見もあり、今後の課題となっています。

Comments are closed.